成分セミナー9【トラネキサム酸】トラネキサム酸とイオン導入の電極
水溶性で分子量が小さく、イオン導入に適した成分のトラネキサム酸ですが、化粧品メーカーによって、導入にプラスを使うのかマイナスを使うのかその使用方法については説明が異なっています。
トラネキサム酸をイオン導入する場合はいったいどちらを使ったらよいのでしょうか?
イオン導入の電極とpHの関係
pH(ペーハー)とは、その物質が酸性かアルカリ性かを表したものです。0~14までの指数によって表され、7を中心としてこれより数値が低くなると酸性が高くなり、これより数値が高くなるとアルカリ性が強くなります。
イオン導入では、導入する成分がアルカリ性に傾いている場合はマイナス(?)でイオン導入し、プラスに傾いている場合はプラス(+)で導入します。
では、数値7の中性の場合はどうでしょうか?この場合は、残念ながらマイナスでもプラスでも導入されません。
トラネキサム酸とpH
トラネキサム酸は実はマイナスでもプラスでも導入できる成分です。それは、トラネキサム酸の成分特性に依るところが大きいのです。
通常、化粧品にはph調整のための成分が配合されており、ph値はどのようにも操作することが可能です。健康な肌のpHは数値4.5~6の弱酸性ですから、化粧品のpHも酸性に近づけたほうが肌への使用感がよいということが言えます。
しかしながら、成分によってはアルカリに寄せたほうが安定するものもあります。代表的なものがビタミンC誘導体です。もともと不安定な成分であるビタミンC誘導体ですので、品質を安定させるためにあえてアルカリ寄りにpHを調整していることが多いのです。
一方でトラネキサム酸は、pHによって成分の安定性が左右されることはありません。そのため、酸性にもアルカリ性にも傾かせることが可能です。化粧品として製品化した場合はトラネキサム酸だけではなく、その他の成分も一緒に配合されるので、それらの安定性も考慮してpHを設定している場合がほとんどです。
トラネキサム酸のイオン導入
では、結局トラネキサム酸をイオン導入する場合は、マイナスとプラスのどちらで行ったらよいのでしょうか? その答えは、トラネキサム酸が配合されたそのイオン導入液のpH次第です。したがって次のようになります。
- ●イオン導入液のpHが酸性の場合→プラスで導入する
- ●イオン導入液のpHがアルカリ性の場合→マイナスで導入する
トラネキサム酸そのものは、弱アルカリ性です。そこで、トラネキサム酸だけを水(水は中性)で溶かした場合の化粧水は、結果アルカリ性となるのでマイナスで導入します。 一方で、特殊な“酸性水”などで溶かした化粧水の場合は、酸性に傾きますのでプラスで導入します。
厄介なのが、弱酸性の液体で溶かした場合です。この場合、出来上がった化粧水はちょうど中性になる場合があります。この場合は、先に述べたとおり酸性とアルカリ性のどちらにも傾きませんので、イオン導入ではマイナス・プラスのどちらの電極を使っても導入されないということになります。